国内最安値を目指す、「Kindle」やLenovo電池を作った台湾企業が日本へ
リチウムイオン二次電池は、日本企業と韓国企業が世界市場の8割弱を握っている。ここに台湾企業が名乗りを上げた。台湾Lico Technologyだ。ラミネート型電池を手に日本市場へ参入、国内最安値を目指す。
リチウムイオン二次電池の用途は幅広い。体積当たり、重量当たりのエネルギー密度が高いため、機器の小型化や軽量化に欠かせないからだ。需要の伸びも著しく、日本や韓国のメーカーがしのぎを削っている。近年では台湾メーカーの活躍も著しい。例えば2000年に創業した台湾Lico Technologyの生産規模は年産200万セルに達しており、米Barnes&Nobleの電子書籍リーダー*1)や、中国Lenovo GroupのノートPC、中国Foxconnが製造した小型電子端末などに電池を供給している。
*1) 米Barnes&Nobleは電子書籍リーダー「Nook」を2009年11月に発売した。この他、米iSuppliが2009年4月22日に発表した調 査リポートによれば、Lico Technologyの電池は米Amazon.comの「Kindle 2」にも使われているという。
同社は薄いシート状の電池、いわゆるラミネート型電池だけに絞って開発、生産を進めている*2)。 当初は携帯型電子機器に 電池を供給していたが、超薄型の電子機器への供給を増やし、電動バイク、最終的には電気自動車(EV)や新エネルギー(再生可能エネルギー)用途を狙って いる。既に電動バイクを製造する台湾メーカーに電池を納めており、EV用途についても中国の自動車メーカーと共同テスト中だという。
*2) この他、ラミネート型電池をモジュール化した組電池も扱っている。
低価格品を携えて日本市場に参入Lenovo 充電池
Lico Technologyは2010年に日本法人リコジャパンを設立、日本国内に研究開発センターも置いている。リコジャパンは、2012年2月1日、自社製 リチウムイオン二次電池の受注生産による販売を開始すると発表した。電動バイクや電気自動車(EV)、蓄電池用途を狙ったラミネート型電池である特長は低価格であること。1Ah(1000mAh)当たり300円程度を予定する。国内最安値を目指した結果だ。低価格化を実現できた理由は3つあるという。
なぜ低価格化できたのか
特 長は低価格であること。1Ah当たり300円程度を予定する。低価格化を実現できた理由は3つあるという。「第1に大型の電池について、生産ライ ンの製造設備を自社で一から設計したことだ。生産ラインに置いた設備1つ1つが、電池をいかに安く製造するかを追求した設計になっている」(リコジャパ ン)。2番目の理由は、技術開発チームの組織運営を工夫したことにあるという。同社によれば日本の技術者と中国の技術者が組んだ場合、多くは日本側が中国側に一方的に技術を伝えるだけになりがちだ。だが、製造拠点は中国大陸にある。するとどうなるか。「(電池の)部材を選択する場面で、中国国内のものを使うという選択肢を、日本の技術者は好まない。中国の部材を使い慣れていないことに加え、品質を心配するからだ」(リコジャパン)。これでは日中が協力する意味が薄れる。
そ こで、開発チームを中国と日本の2チーム制として、日本の技術を中国が改良するという形にした。「あえて教える、教わるという関係ではなく、日本側 チームが作ったもの、そこに使われた技術をベースに中国側チームが自由に手を加えている。中国側は日本側よりも中国国内で流通している部材をはるかに熟知 している。このため、安定した品質で、かつ低価格の部材に置き換えることができる。こうしてでき上がったものを日本側が評価し、品質に問題がないかチェッ クする形だ」(リコジャパン)。
3番目の理由として、震災後の困難な状況にある日本に対して、グループ全体として応援したい思いがあるとした。
Lenovo バッテリー3種類の電池を販売
リコジャパンが販売するラミネート型のリチウムイオン二次電池セルは、3種類ある*3)。*3) Lico Technologyは、日本以外の市場に向けて、容量0.8Ahから5Ah以上まで、約50種類のセルを販売した実績がある。
容量別に3種類あり、5Ah品と10Ah品、20Ah品である。5Ah品は131mm×61mm×7.3mmと小さく、重量は120gだ。10Ah品の重量は240g。
同社は社名(Lico)にもあるように、当初LiCoO2(コバルト酸リチウム)正極からスタートした。その後、LiMn2O4(マンガン酸リチウム)正極や、三元系、すなわちLiNixMnyCo1-x-yO2(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)正極などを開発している*4)。今回の電池セルでは、三元系正極(とグラファイト系負極)を用いた。
*4) 現在、同社は正極材料開発の比重を下げており、主に他企業から材料を調達している。
なお、リチウムイオン二次電池は一般に充放電の管理が難しく、不用意な充放電は電池寿命や安全性の低下を招く。特に充電電圧値の管理が欠かせない。そこで、電池に充放電制御回路、ケースを付けた電池パックでの販売も予定する。
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